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音楽のDNAを可視化する『MusicDNA』。楽曲内部の共通性にみられるおもしろさ

ウェブディベロッパーのポール・ルイスは、音楽の楽曲の周波数を「カラフルな円」に可視化するアプリを開発した。MusicDNAと名付けられたこのアプリを使えば、楽曲の表面的ではない「内面」の共通性を明らかにすることができる。今回はそのMusicDNAを使っていくつかの楽曲のDNAを比較した。

カラフルなリングが現れた画像(上部)。皆さんはこれが何を示すものに見えるだろうか。実はこれ、「音楽のDNA」を可視化したものである。といっても、そもそも「音楽のDNA」自体が一体なにを指しているのか?その内容を下記で説明している。

オンライン上のコンテンツ『MusicDNA』では、あなたの好きな楽曲のファイルを選んでドロップすると自動的に「カラフルな円」が生成される。この『MusicDNA』を開発したのは、エアロツイスト(AEROTWIST)名義で知られるウェブディベロッパー(プログラマー)のポール・ルイス(Paul Lewis)だ。彼は楽曲の周波数をリングの形に描くアプリケーションを作り上げた。「楽曲データを360度の円形に可視化できる」というシンプルではあるが非常に興味深いツール。簡単に説明すると、曲中のある時点におけるアクティブな周波数を元に「色付け」と「円の形成」がなされるようになっている。それぞれの楽曲によって異なる色味や形がアウトプットされるという仕組みだ。ProTools(※1)やGarageBand(※2)で楽曲のローファイルを見ることはたまにあるが、『MusicDNA』はそれとはまた違う意味で音楽データを可視化していると言える。

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セレクトした楽曲をドロップし「音楽のDNA」を試してみると・・・

例えば、カニエ・ウエストの『Bound 2』

以下の図形は、楽曲内のチャーリー・ウィルソン(※3)が歌うパートのDNA周波数である。

比較として、アンダーグラウンド・プロデューサー、DJリチャードによるテックハウス・トラックをテストした。

2つを比較すると、後者の中身の方が詰まっているように見えるかもしれない。

ポール・ルイスはブログへの書き込みで、以下のようなことを語っている。

「(MusicDNAをうまく機能させるためには)周波数の増幅率の正確な数値が必要なので、プロの手によってマスタリングされたポピュラー音楽や電子音楽が好ましい。不都合な点は、静かな曲や騒々しい曲のときにはうまくいかないことだ。」

その説明によって、倉庫を揺るがすようなテクノの激しい曲の方がカニエの話題曲よりもいくぶん綺麗な図形に見えることが説明できるかもしれない。

そして驚かざるをえないのだが、2013年ヒット曲であるマイリー・サイラス(Miley Cyrus)の「We Can’t Stop」のデジタルDNAは、「Bound2」とほぼ一致している。これがそのビフォーとアフターである。

これはかなり興味深い。『MusicDNA』を通して見てみると、ラジオでよく耳にするこの2曲は、音のDNAが似ているように見えるのだ。

またポール・ルイスはこのように語っている。「このアプリケーションは、ウェブオーディオAPI(ノードグラフのような役割を果たす)と設定が簡単なFFTアナライザー(リアルタイムで周波数を測定するツール)を使用して作りやすかった。」さらに彼はそのアプリケーションの作り方も、自身のサイトで説明している。

もちろん今では、もっと斬新なプロジェクトを創作し音楽を独自にビジュアル化するアーティストやプログラマーが他にも存在する。しかし彼は自分のお気に入りの楽曲の「内部」に光をあてて、MusicDNAというサイトをDIYで作り上げた。しかも10時間のフライトという短時間でこの見事な仕組みを完成させたポール・ルイスに心から敬意を評したい。

脚注:

(※1)ProTools:プロ、アマを問わず世界中の音楽制作家に広く使用されているソフトウェア。

(※2)GarageBand:アップル製の音楽制作ソフト。

(※3)チャーリー・ウィルソン:80年代に活躍したファンクバンド、ギャップ・バンド(Gap Band)のリード・ボーカル。昨年発表した「Bound2」でカニエ・ウエストとコラボレーションした。