坂本龍一 Art-Environment-Life展。大震災を機に、自然への敬意をインスタレーションで表現

坂本龍一 Art-Environment-Life展。大震災を機に、自然への敬意をインスタレーションで表現

 

震災を経て自然への敬意を再び

世界を舞台に活躍するアーティスト・ミュージシャン・作曲家である坂本龍一は、2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、自然への敬意をもう一度取り戻そうという思いを新たにしたという。その思いを形として表したのが、2013年11月1日〜2014年3月2日まで開催された山口情報芸術センター(YCAM)10周年記念祭でのインスタレーション<Art-Environment-Lifeアート-エンヴァイロメント-ライフ>である。

言うまでもなく、2011年に東北地方を中心に襲った東日本大震災は、地震国である日本の地震専門家の予想をはるかに超える大規模なものだった。復興は容易に終わりそうにない。 この震災を受け、坂本龍一は復興プロセスに代わる行動を起こそうと決意し、山口情報芸術センター(YCAM)(山口県・山口市)の10周年記念祭へ参加することとなった。

 

山口情報芸術センター(YCAM)10周年記念祭での3つのインスタレーション

同記念祭のメイン展示である坂本の<Art-Environment-Life>は、3つのインスタレーションで構成されている。いずれも、アーティストグループ・ダムタイプの創始者であり、長年共同制作を行ってきたアーティスト・高谷史郎とともに制作した作品だ。それぞれのインスタレーションは、周囲の環境と相互作用し、「自然をより深く知ることから、これからの文明やアートが生まれるはずだ」という坂本の信念を伝えている。

この相互作用とは、音によるコミュニケーションを指す。メインのインスタレーションForest Symphony フォレスト・シンフォニーは、世界各地の樹木から生体電位データを収集し、その波長を重層的な音楽体験へと変換する展示だ。YCAM InterLab YCAMインターラボとのコラボレーションで、Arduino アルドゥイーノのプロセッサベースによる記録装置を作成して木の枝にぶら下げ、流れ続けるデータをインスタレーションの中心地に送る仕組みである。このオーディオコンポーネンツはオンラインでも見ることができた。YCAMのウェブサイトによると、サイトでは「季節や天候に応じて変化を続ける」サウンドインスタレーションを体験できるとのことであった。

個々の樹木からのデータを記録

下にある機器をチェックして、見上げてみる。記録したデータの音を聞くと、樹木たちがまるでジョン・ケージのような音楽を奏でていることに気づいたことだろう。

 

新解釈を加えてリニューアルした作品も

その他2つのインスタレーションにはForest Symphonyほどの新鮮さはないものの、YCAMの10周年記念祭として大幅にリニューアルした新バージョンとなっている。LIFE - fluid, invisible, inaudible... Ver.2 フルイド・インヴィジブル・インオーディブル・バージョン2で、坂本と高谷は下向きにつり下げた水槽9個を天井に並べた。水槽の中には人工の霧が充満しており、スクリーンの役割を果たしている。そこに坂本の1999年のオペラ『LIFE ライフ』からの映像が流れる。霧のスクリーンは、見えているものすべてに薄いベールをかけていく。

YCAMのウェブサイトでは、コンセプトを深く掘り下げて説明している。「さらにこの映像に呼応するかたちでサウンドが上方から降り注ぎ、刻々と姿を変える映像とともに、同期と分散を繰り返しながら複雑に交錯。観客は移ろいゆく光と音に身を委ねながら、徐々にその感性を環境へと開いていくこととなる」

これは15年前の作品をリニューアルしたものだが、今回の新バージョンでの解釈(そのため、インスタレーション名の最後に「2」とついている)では、新たにデザインされたイメージとサウンドが組み合わされ、坂本が抱く2011年の大震災以降の、人と自然との関係への考え方が示されている。

3つ目のインスタレーション water state 1 ウォーター・ステート・ワンは、坂本と高谷が再度YCAM InterLabとコラボレーション。サンドボックス風の受信機が水滴の音をハーモニーのある交響楽の音に変える。コンセプト的には先ほどのForest Symphonyと類似している。以下のビデオでは、この作品を他の2つのインスタレーションとともに見ることができる。

坂本龍一『ART – ENVIRONMENT – LIFE』YCAM委嘱作品

この<Art-Environment-Life>は、山口情報芸術センター(YCAM)10周年記念祭が終了した現在でも、引き続き同館内で開催されている。

 

All photos courtesy of YCAM.

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